跋 『唯 語る』




 それからの世界が、決して僕にとってよかったかというとそうでもない。
 でも悪かったかというと、それもそうでもない。
 勉強は難しくなった。試験の内容もかなり濃くなった。でも友達もできた。和葉ともまだまだうまくいってる。
 悪くはない。悪くはない。
 何もかもうまくいくかというと、そうでもないし、結局のところ失敗ばかりの人生を歩んでる。
 でもまだ僕は始まったばかりなんだ。また前みたいには戻らない。
 それだけは毎日のように固く誓っている。
 友達と遊んだり、晃や和葉ともまだ馬鹿みたいに漫画オタクやってたり。でもそれは今の僕にとって本当にありふれた日常でしかないのか、というとそうではない。本当に特別なものなんだ。当たり前でいて、大切なもの。それが特別。こうして毎日わいわいバカやっていることは本当にかけがえのない時なんだ。
 それを僕は学んだ。だから決して自分を捨てちゃいけない。
 これは僕が経験した、僕だけの物語だ。決して他人には知ることもできないし、知られたくはない。でも僕が存在する上で体験した、僕という存在そのものだ。それが僕の人生。生きた道なんだ。
 僕はまた新しい旅に出た。そして僕の前には未だ砂漠が広がっている。まだ町やオアシスは見えてこない。今まではただ目印となる砂漠の枯れ木の下で休んでいたに過ぎない。
 でも今の僕は確実に前に歩いている。
 いつ終わるのか分からない僕の物語は、まだ続くのだ。
 それは正しいか、間違っているかも分からない。自分だけが正しさと選ぶ権利を知っている道のり。決して楽なものではない。
 でも命果てるまで、永遠に続く道なのだ。迷うこともある。それでも迷子になってもその道は歩き続けなければならない。時には道を一緒に歩いてくれる人もいれば、道を教えてくれる人もいる。正直、僕は沙耶の存在がまだ神様のいたずらじゃないかって思ってる。本当は沙耶をなくしたときから気づいていたんだ。でも怖かった。沙耶との出会いが間違いだとは思いたくなかったから。でも今は迷わない。沙耶と会えて本当によかったと思う。
 だから歩む道は、自分で選ばなくちゃならない。そして悩んだあげく選んだ道に間違いなんかないはずだから。
 だから自分を信じて歩いて。そして生きる。それが僕らの存在の意味だと思う。
 ね、目を閉じて、あなたの歩んできた道を思い出してごらん。
 ほら、君にも。あるだろう。
 さぁ。
 聞かせてよ。
 君だけのを・・・・・・


the end.












 この物語は、もうなくなった。
 名のないタイトルを持つ、物語になってしまった。
 僕の中ではもう忘れたことだ。
 もう、なにもない。
 あったことは、なかったことになった。
 だからこれで終しまい。
 僕は違う物語を書くとするよ。
 一つだけ、最後に。

 沙耶―――。
 You're the one I believe...



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